地球温暖化による気候変動で、気温の上昇や集中豪雨、夏の猛暑や冬の大雪などさまざまな現象が起きています。
今回は気候変動による生態系への影響について、日本の今とこれからをそれぞれ解説します!
現在、地球温暖化は進んでおり、それに伴って気候変動の影響も拡大しています。地球温暖化の原因となるのが、二酸化炭素やメタン、フロンなどの温室効果ガスの排出です。
国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新の報告書では、1900年頃と比べ、2010年代では人為的な原因で世界平均気温が推定1.07℃(0.8~1.3℃)上昇したとしています。
大気中の二酸化炭素濃度は過去200万年間で現在が最も高い状況です。このままのペースで温室効果ガスを排出し続けていけば、2100年までの間に世界の平均気温は1900年頃に比べ2.1〜3.5℃上昇すると予測されています。
報告は、地球温暖化を食い止めない限り、環境に想像を絶する重大な被害をもたらす可能性があると指摘しています。
(参照: https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar6/IPCC_AR6_WG1_SPM_JP_20220512.pdf)
では、気候変動は生態系にどのような影響を及ぼすのでしょうか。まずは、日本で既に起きていることを見ていきましょう。
高山帯・亜高山帯では、気温の上昇や雪解けが早まったことなどによる、植生の変化が見られています。
例えば北海道・大雪山五色ヶ原には、1990年代前半までエゾノハクサンイチゲという高山植物の群生地がありましたが、徐々に数を減らし、2007年には主にイネ科植物が生育する草原へと変化しています。
(参照: https://www.env.go.jp/content/900489572.pdf)
近年、野生のシカやイノシシが急増し、分布も拡大する傾向が見られています。それによって農作物への被害の他、地表の植物を食べつくしてむき出しになった土壌が流出したり、皮を食べられた木が枯れたり、他の生物が足りなくなるなどの問題が起きています。
(参照: https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs5/imatora_fin.pdf)
ハチやハエ、チョウなどの花粉媒介昆虫の活動時期に変化が見られています。花粉媒介昆虫とは、植物の花粉を運び、果実などの生育に役立つ昆虫のことです。
昆虫類による花粉媒介が必要な作物には、かぼちゃ、りんご、柿、スイカ、なし、などなど…さまざまなものがあります。
しかし、花粉媒介昆虫が減少したり、活動時期がずれたりすることで、これらの作物の栽培にも影響が生じると考えられています。
あわせて読みたい: SDGsバッジとは?つけるメリットや購入方法、注意点を解説
亜熱帯地域では海水温の上昇などがストレスとなり、サンゴが内部に共生していた褐虫藻を失ってしまう、白化現象が報告されています。この状態が続くと、サンゴは褐虫藻からの栄養を受け取れず、死んでしまうのです。沖縄地域ではこのようなサンゴの白化現象が多く見られています。
また、太平洋の房総半島より南の海域や、九州周辺の海域では、温帯性サンゴの分布が北上する現象が起きています。
あわせて読みたい: サステナビリティとは?3つの観点やSDGsとの違いを解説
生物季節とは動植物が示す季節の現象のことです。気候変動による気温上昇の影響で、桜の開花の早まりや、かえでの紅葉の遅れ、ウグイスの初鳴きの時期が早まるなどの例が報告されています。
桜は1960年代の4月1日頃には、三浦半島から紀伊半島にかけての本州の太平洋沿岸と四国、九州で開花していました。しかし、ここ10年間では同じ時期に関東や東海、近畿、中国地方でも開花するほど、全体的に早まっています。
(参照: https://www.data.jma.go.jp/sakura/data/index.html)
地球温暖化がこのまま進み続けた場合、現時点で起こっている現象はさらに進行すると考えられています。
例えば森林の生態系では、高山帯の代表的な樹木であるハイマツなどの分布の変化や縮小、ブナがより標高の高い地域へ移動するなどの予測がされています。
また問題視されているのが、野生動物の生息域拡大による被害です。気温が上がり雪の積もる期間が短くなることにより、二ホンジカなど一部の野生動物の生息域が拡大し、地表の植物や樹木への食害がさらに深刻になると予測されています。
さらに海の環境では、植物プランクトンが亜熱帯地域で減少し、亜寒帯地域で増加するなどの変化や、サンゴが海水温上昇と海洋酸性化によって生息域を失うといったショッキングな事態も予測されています。
(参照:
https://www.rinya.maff.go.jp/j/hogo/higai/tyouju.html
https://www.nies.go.jp/kanko/news/35/35-5/35-5-02.html)
気候変動によって生態系全体が影響を受けています。人間は生態系から多くの恵みを受け取って生きており、生態系の変化は人間にも影響してくる問題です。
例えばサンゴは魚の住みかとなったり、二酸化炭素を吸収したりするなど、生態系の中で重要な役割を果たしています。もしもサンゴが絶滅してしまったら、多くの魚も生きることができなくなり、海を含む地球全体の生態系は大きなダメージを受けるでしょう。
人間は自然界の生き物と共存しているということを忘れず、気候変動に関心を持ち、対策と適応をしていくことが大事なのではないでしょうか。
あわせて読みたい: 持続可能な観光とは?サステナブルツーリズムが求められる理由
この記事をシェアする