「サステナブルファッション」や「サステナブルフード」など、さまざまな分野でサステナブルという言葉が使われていますが、観光業界で耳にするのが、「サステナブルツーリズム」という言葉。
今回はサステナブルツーリズム、すなわち「持続可能な観光」の特徴や、求められている理由についてわかりやすく解説します!
サステナブルツーリズム、つまり「持続可能な観光」には、どんな定義があるのでしょうか。
国連世界観光機関(UNWTO)では、サステナブルツーリズムとは「訪問客、産業、環境、受け入れ地域の需要に適合しつつ、現在と未来の環境、社会文化、経済への影響に十分配慮した観光」と定義しています。
また日本政府観光局では、「日本版 持続可能な観光ガイドライン」を提案し、サステナブルツーリズムを推進する取り組みを行っています。
日本版のガイドラインでは、「地域の環境・文化・経済を育み、守る」といった考えを示しており、観光客が楽しむだけでなく、観光地に暮らす人々も豊かになれるような持続可能な観光こそが「サステナブルツーリズム」であると提唱しています。
(参照: https://www.jnto.go.jp/jpn/news/press_releases/20210622.pdf
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001350849.pdf)
では、なぜ今サステナブルツーリズムが求められているのでしょうか。それは従来の観光業の在り方に、さまざまな問題が生じているからです。詳しく見ていきましょう。
宿泊施設の建設による環境破壊は、観光業における大きな問題のひとつです。特に1950年代以降、経済発展と共に観光や旅行がブームとなり、リゾート開発によって山や森林が切り崩され、自然環境や生態系に悪影響を及ぼしてきました。
最近では観光資源である自然環境を破壊するあり方が見直され、持続可能な観光の形が求められています。
(参照: https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h04/8278.html)
誰もが気軽に旅行を楽しめるようになった一方で、受け入れ切れなくなるほどの観光客が押し寄せる、「オーバーツーリズム」が起こっています。
日本では京都や神奈川県の鎌倉市などでオーバーツーリズムの事例がありました。マナーの悪い観光客が増え、ビーチに放置されたごみや交通渋滞による大気汚染などの問題が起こっています。
景観の悪化などで観光地の価値が失われる事態が発生したことも、サステナブルツーリズムが求められている理由です。
観光客が増えたことで地域住民が暮らしにくくなるといった事態も発生しています。例えば沖縄県の宮古島では、クルーズ船の入航時間になると観光客がタクシーやバスを占領してしまい、住民が利用しづらい状況になっています。
さらに、観光客を受け入れるために観光整備が進められたことで、建設物が増え、島の景観が損なわれていると嘆く住民もいます。
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観光業が抱えるさまざまな問題を見てきましたが、これらの解決策となるのがサステナブルツーリズムの推進です。
では、サステナブルツーリズムにはどのような特徴があるのでしょうか。
海で遊ぶだけでなく、ビーチクリーンもセットで行うツアーなどが登場しています。シーカヤックに乗って、海のアクティビティを楽しんだ後は、清掃に参加して環境保護活動を体験するというプログラムです。
きれいな海の景色と共に、海洋プラスチックごみの現状を知ることができ、環境意識も高められるでしょう。「学べる旅」として、親子で参加するのもおすすめです。
(参照:https://www.asahi.com/sdgs/article/14695943)
ハイキングが好きな人におすすめなのは、植林体験ができるツアーです。ただのハイキングではなく、植林体験がセットになっているため、アウトドアを楽しみながら環境保全活動ができます。
森林には大気中の二酸化炭素を吸収して酸素を吐き出してくれる役割があるため、植林をすることで、CO2の削減に貢献できるのです。
「旅行の移動で排出したCO2を植林で吸収する」と考えれば、環境に優しい旅といえるのではないでしょうか。
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これまで観光業はリゾート地の開発による自然破壊など、環境に大きな負荷を掛けてきたことがわかりました。
しかし、観光業だけが悪いわけでなく、観光客としての在り方も見直す必要があるでしょう。ごみを持ち帰ることや地域住民に配慮した行動をとること、地元の食材を使った料理を食べるのもサステナブルツーリズムといえます。
これからは持続可能な旅を意識して、サステナブルツーリズムを取り入れてみてはいかがでしょうか。
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