愛らしいフォルムで人々を魅了するペンギン。そんなペンギンが気候変動をはじめとするさまざまな脅威によって減少しているといいます。南極に住むペンギンたちは今、どのような脅威にさらされているのでしょうか。
今回はペンギンに襲いかかる脅威やペンギンを守るためにできることを解説します!
ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校とノースイースタン大学の科学者が2020年に行った調査によると、南極半島の近くのエレファント島にいるヒゲペンギンの個体数が1970年代初頭の計測時に比べ60%近く減少していることがわかりました。
また、あるペンギンの群れでは77%減少していたとされています。さらに2022年の最新ニュースでは、南極大陸に生息するコウテイペンギンが2050年までに26~47%減少すると予測し、米内務省の魚類野生生物局(FWS)は「絶滅危惧種保護法」の対象にコウテイペンギンを加えると発表しました。
ペンギンはこれまで6000万年という長い歴史の中で、気候変動に適応し進化をくり返してきました。しかし、進化速度は現代に近づくにつれ大幅に低下しており、近年の急激な気候変動に進化が追いつかない可能性があると研究者は語っています。
(参照:減り続けるペンギンを救う方法)
(参照:コウテイペンギン、気候変動で絶滅の危機に 米当局)
(参照:Penguins Are Among the World’s Slowest-Evolving Birds: Study)
ここからはペンギンが減少している理由でもある、気候変動をはじめとした脅威を見ていきましょう。
気候変動による海氷面積の減少
気候変動によって気温が上昇したことで南極域の海氷面積は減り続けており、2022年には観測史上最小値を記録したと報告されています。
海氷はペンギンが生きていく上で必要な場所です。えさ探しの長旅での休息場所であり、敵から身を守るための場所でもあります。
また、海氷がなければ繁殖も難しくなります。海氷の減少はペンギンの個体数の減少に大きく関わっているのです。
(参照:南極域の海氷面積が観測史上最小を記録)
資源の乱獲によるえさの枯渇
南極海ではペンギンのえさとなるナンキョクオキアミが乱獲され、えさが枯渇している現状があります。
南極海はナンキョクオキアミの最大の漁場であり、海氷が減少していることもあって漁船がより奥まで入り込めるようになりました。
ナンキョクオキアミの1日あたりの漁獲量は725トンを超え、家畜の飼料などに使われるといいます。
このような状況から、親ペンギンたちはヒナにあげるえさの確保が困難になってきています。
(参照:温暖化で広がった南極のオキアミ漁場 ペンギンに異変)
観光客や石油流出による生息地の劣化
観光客が残したごみや足跡、石油の流出などによって、ペンギンが巣作りをする場所が被害にあっています。
また、フォークランド諸島に生息するミナミイワトビペンギンの卵は、人間によって採取されるなどの影響で個体数が大きく減少しました。
現在卵の採取は禁止されていますが、しっかりとした保全はされていないため動物園の展示のために捕獲されるケースもあるといいます。
人間が入り込むことで生息地に何らかの影響を及ぼし、ペンギンの生息地が劣化してしまうのです。
(参照:ミナミイワトビペンギンのIUCNレッドリスト評価について)
人間によって持ち込まれた犬やキツネなどによる絶滅や疫病の拡大
人間によって持ち込まれた外来種の犬やキツネにペンギンが食べられてしまう、あるいは猫やねずみが疫病をペンギンの群れに広めるといった問題が発生しています。
オーストラリアに生息しているコガタペンギンは、過去100年間ほどで犬やキツネに食べられて、ニューサウスウェールズ州を除く地域で絶滅してしまったといいます。
(参照:Invasive species in penguin worlds: An ethical taxonomy of killing for conservation)
さまざまな脅威と戦っているペンギンを守るために人間ができることがあります。それは、大規模な海洋保護区を設けることです。
気候変動を直接食い止めることはできなくとも、世界の海の30%を海洋保護区にすることで、ナンキョクオキアミの乱獲を防ぎ、人間や外来種による生息地の劣化や悪影響を抑えることができるといわれています。
そのためには、責任ある漁業管理やモニタリングの強化なども必要です。ペンギンがえさをしっかりと確保し、ヒナを安心して育てられるなど、生息しやすい環境を整えることで、気候変動に適応するチャンスを得る可能性が広がるでしょう。
しかし、海洋保護条約はまだ承認されておらず、実現できていないのが現状です。世界中の人々が海とペンギンを守るための理解を深め、声を上げていくことも必要なのかもしれません。
そして、一人ひとりが気候変動の原因になる温室効果ガスの排出量を減らす努力をし、気候変動を最小限に抑えていきましょう。
(参照:海洋保護の未来図)
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