遺伝子組み換え食品とは、生物の細胞から有用な遺伝子の一部を取り出し、他の植物などの細胞に組み込んで新たな性質を持たせた食品のことをいいます。
遺伝子組み換えによって、害虫に強い作物や除草剤の影響を受けない作物などが作れるため、生産効率が上がるなど農業生産者にとって大きなメリットになっています。
しかしその一方で、健康や環境への影響など問題点があるのも事実です。そこで今回は遺伝子組み換え食品の問題点について見ていきます!
日本で使用が認められている遺伝子組み換え食品は、とうもろこしや大豆などの作物が全8品目(169品種)、添加物が7種類(15品目)です。(2012年3月時点)
現在日本で商業的に栽培されているものはなく、流通している遺伝子組み換え食品の全てが輸入されたものです。これらは流通する前に安全性審査を受けることが義務付けられています。
生産者が厚生労働省に申請し、食品安全委員会が最新の情報に基づいて食品影響健康評価を行い、安全性に問題がないと評価された食品のみ販売できる仕組みになっています。そのため、遺伝子組み換え大豆や穀類などを原料にしたプラントベースフードも、安全性審査を受けたものなので、食べても問題ありません。
(参照: https://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/dl/h22-00.pdf)
遺伝子組み換え食品は安全性審査を受けたものだけが流通しているため、一見何の問題もないように思えます。しかしながら、遺伝子組み換え食品については長年に渡って賛否両論が巻き起こっています。一体どんな点が問題とされているのでしょうか。
遺伝子組み換え食品は本来の遺伝子ではないものを組み込んでいるため、アレルギーを引き起こす可能性があるのではと懸念されています。
これに対して厚生労働省は、組み込まれた遺伝子によって作られるたんぱく質がアレルギーの原因にならないか、厳しくチェックしているといいます。
例えば、胃や腸でしっかり消化されるか、加熱で分解されるか、アレルギーの原因物質と似ていないかなど細かく検査し、アレルギーを引き起こすものは市場に出回らないような仕組みを作っています。
しかし、未知のアレルゲンによってアレルギー反応を誘発する可能性については、ゼロとは言い切れない部分があります。
(参照: https://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/dl/qa.pdf)
EUでは全ての食品において遺伝子組み換えか、そうではないかの表示義務があります。スーパーに並ぶ食品はもちろんのこと、レストランやカフェのメニューにも表示が義務付けられているのです。
日本でも、大豆や味噌、豆腐などには遺伝子組み換えの原料を使った場合、「遺伝子組み換え」の表示が義務付けられています。しかし、醤油、大豆油、コーン油、コーンフレーク、マッシュポテトなどは原料に含まれる遺伝子やたんぱく質が加工の過程で除去・分解され検出できなくなるため、表示義務がありません。そのため、表示はされていなくとも遺伝子組み換え食品を使っているということが十分に考えられるでしょう。
そういった部分が、遺伝子組み換えに対し消費者が不安を持つ一因となるのかもしれません。
(参照:
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/review_meeting_010/pdf/review_meeting_010_180419_0002.pdf)
遺伝子組み換えをした作物の花粉などが飛散し、野生種の植物と交配が起こり、意図せずに遺伝子組み換え作物を作ってしまうのではと問題視されています。
実際、日本でも輸入港近くで遺伝子組み換え植物の自然発生が報告されているのです。輸入された遺伝子組み換えのセイヨウナタネがこぼれ落ち、発芽して自生しているのが発見されています。
セイヨウナタネはかぶや白菜などと自然交雑しやすいため、容易に遺伝子組み換え作物が出来てしまう可能性があります。
国立環境研究所の調査によると今のところ、遺伝子組み換えナタネやそれと交雑した雑種ナタネは広がっていません。しかし自然へ広がっていく遺伝子汚染は、コントロールが難しいと考えられます。遺伝子組み換え植物による環境への影響が予測できない点は、大きな問題といえるでしょう。
参照:
https://www.maff.go.jp/j/press/syouan/nouan/pdf/111014-01.pdf
https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/75/04-09.html
遺伝子組み換え食品は生産効率を上げるためには重要な技術といえます。害虫や除草剤に強い作物が作れたり、栄養豊富な作物を作れたりするのは大きなメリットといえるでしょう。
しかし、一方で今回紹介したようなさまざまな問題があるというのも事実です。現段階では安全性が確認されていたとしても、長期的に健康や環境へどう影響していくのかは未知数でもあります。
遺伝子組み換え食品をよく理解し、自分自身で判断する姿勢が必要といえるでしょう。
あわせて読みたい: 遺伝子組み換え食品とは?プラントベースフードの安全性も解説
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/bio/idenshi/index.html
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