気候変動がもたらす気温上昇や異常気象によって、穀物や畜産物、果物や魚介類などさまざまなものの生産が悪影響を受ける、食料問題が発生しています。
しかし、その一方で気候変動を起こす温室効果ガスを排出する大きな要因のひとつが、食料生産と食品ロスであるという現状があります。
今回は「食料問題の裏側」をテーマに、食料生産と食品ロスが気候変動に与える影響について解説します!
現在、地球はかつてないスピードで温暖化しています。地球温暖化は温室効果ガスが地球を覆い、太陽の熱が閉じ込められることによって起こります。この温室効果ガスの濃度は今、ここ200万年間で最も高い水準だと報告されているのです。
国連の気候変動に関する政府パネル(IPCC)が2021年に出した最新の報告書では、「1750年頃以降に観測された温室効果ガスの濃度増加は、人間活動によって引き起こされたことに疑う余地がない。」と記しています。
つまり地球温暖化による気候変動も、人間の活動が原因なのです。そして地球上の温室効果ガスの発生源の3分の1は「食」に関係していることが、EU共同研究センターによる研究で明らかになっています。
(参照:
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar6/IPCC_AR6_WG1_SPM_JP_20220512.pdf
https://www.afpbb.com/articles/-/3336993)
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食料生産は温室効果ガス排出源のひとつです。食料生産の中のさまざまな場面で、地球温暖化の原因となるフロンやメタン、二酸化炭素などが発生します。
具体的には、農地開拓のための森林伐採や化学肥料の使用、牛のゲップや排泄物からの発生などが挙げられます。
森林伐採をすると、樹木の中に蓄えられていた炭素が放出されるうえ、樹木が持つ二酸化炭素を吸収する能力も失われてしまいます。
また、化学窒素肥料を畑にまくと、余った窒素が微生物の働きで化学変化し、一酸化二窒素が発生します。この一酸化二窒素は二酸化炭素の約298倍の温室効果を持ちます。さらに牛のゲップに含まれるメタンも、二酸化炭素の約25倍の温室効果があるといわれています。
その他にも食品の加工や梱包、流通、廃棄物の処理に至るまで、さまざまな過程で化石燃料が使われるため、二酸化炭素などの温室効果ガスが大量に排出されるというわけです。
より温室効果ガス排出が少ない農法への切り替えなど、食料生産システムを変革するような対策が求められています。
(参照:
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/climate_change_un/climate_change_causes/
https://www.nedo.go.jp/content/100934250.pdf)
食料が気候変動につながるのは、生産や流通の過程だけではありません。食品ロスもまた、焼却処理すれば二酸化炭素を、土に埋めた場合には二酸化炭素よりも温室効果の高いメタンを、それぞれ発生させます。
食品ロスからの温室効果ガスの排出量は、自動車に匹敵するといいます。環境NPOの世界資源研究所(WRI)が2011〜2012年にかけて調査したデータを見てみましょう。
気候変動による食料問題の裏側には、気候変動を引き起こす要因として、食料生産や食品ロスが大きく関わっています。これまでの食料生産の仕組みを変え、食品ロスを減らすためには、政府や企業だけでなく、消費者も一緒に取り組む必要があります。
私たちにできることは、環境負荷の低い食品を選ぶことに加え、食品ロスを減らすことです。例えばなるべく環境負荷を掛けずに生産した証である「有機JASマーク」が付いた食材や食品を選んだり、環境負荷の低いプラントベースフードを選ぶのもおすすめです。
また、流通による温室効果ガスの排出が少ない地元の食材を選び、地産地消を心掛けるのも良いでしょう。さらに食品ロスを減らすためには、食材の買い過ぎを控え、使い切る・食べ切ることも大切です。
一人ひとりの行動で温室効果ガスの排出を減らして気候変動を抑え、おいしい食事が楽しめる未来を築いていきましょう。
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